新しい光と空間の在り方を提案した都市住居
時に都市においての住宅では、その敷地の特徴的な関連性が見いだせずに、関係や空間を閉じて内なる領域をつくる方向になりがちである。これまで我々は都市においても何らかの形で環境との相関関係を見いだし、環境の空間的要素や関係性を軸にしたシークエンスの再構築と、生活プログラムを重ね合わせる中から、建築の輪郭を浮上させる努力をしてきた。このParallaxでは都市と住空間の関係を問い直し、新しく両者を繋ぎ合わせるためのプログラムを見いだすことが課題となった。
建物は敷地いっぱいかつ三層のボリュームをまずは想定し、そこから徐々にヴォイドを切り欠いていった。オープンな空間領域は水平方向および垂直方向の両方に展開する。そこでは単純な積層や、あるいは変化ばかりを与えていくのでもなく、どちらかといえば、反復と差異が繰り返されることによるシークエンスを目指した。
空間の奥行きとシークエンスを創り出し、光に溢れた場を形成するために、我々のとった戦略は、「マッス」としての空間と「ヴォイド」としての空間を、相互に補完しながらも切り欠くようにしてプログラムを構成することだった。プライベート空間はマッスと翻訳され、パブリックな領域はヴォイドとして展開する。ヴォイドにおいては、視野の展開だけでなく、包囲光を導き入れる役割も果たしている。
北側のグラスファイバーによる壁面は、入射光が柔らかく乱反射されて透過し、滲み出し、住宅と都市が互いに不思議な姿を写すフィルターとなっている。